ジャンプアタック(JUMP ATTACK)の真意とパワーに関しての考察

2019年11月24日

jumpATTACKtruth

最初に断っておきますが、自分は医師であり、S&Cのコーチでもなければ理学療法士でもありません。
いわゆる専門家ではないです。

間違った情報がたぶんに含まれていることをご容赦ください。

(その方面の方が見たら「ちがーーーーう!」と言われてしまうかもしれません。)

プラスして、この記事の大前提として、パワーが上がればジャンプ力が上がると考えています。

スポーツ科学ではいろいろな考えがありますが、正直これが一番単純なのでこれで話をすすめます。

ちなみにパワーというのは仕事率のことで、1秒間にどれだけ仕事をしたかを表します。

ややこしくなるので省略しますが、

パワー = 力 ✕ 速度
POWER = FORCE ✕ VELOSITY

という等式が成り立ちます。

つまり、パワー(power)をあげるためには力(force)そして速度(velosity)をあげることが重要です。

スクワットで例えると、というのは挙上重量×加速度のことで、速度というのがスクワットを1回あたりにかかる時間、つまり挙上速度になります。

ジャンプアタックで提唱されるトレーニング

jumpattack

本気でジャンプ力を上げたいと考えている人ならまず購入しているであろう本、ジャンプアタック

著者はティム・S・グローバー氏

Gilbert Arenas, 2009-10 NBA All-Access

(日本語版は初版のまま何も更新されていませんが、英語のJUMP ATTACKは実はアップデートとされています。買ったけどまだ読んでない。。。)

ジャンプアタックでは、こんなトレーニングが紹介されています。

Chapter5 爆発力のトレーニングにて

「ジャンプATTACKがその他のものに比べてユニークであることは、順序正しく回数をこなすことをうまく取り入れる点で、単に回数を行うだけではない」

「大切なのは、いかに多くの重さを上げるかではなく、回数のスピードが重視される。」

「パーフェクトフォームで行い、そして、できる限り敏速に、爆発力を目標にして行う。」

「ほとんどのプログラムは、これを3セット、別のルーティンを3セット、さらに別のを3セットといったやり方をするけれど、私達は、このウエイトを1セット、ジャンピング・エクササイズを1セット、スポーツ・スペシフィックドリル、ストレッチ。ここまでやって、また頭に戻る。1つのことを続けて3セットするのではない。」

「また、私達のトレーニングは回数ではない。1つのエクササイズを決まった時間やるように指示している。それぞれのエクササイズを10回やりなさいというのではなく、それぞれ30秒間、20秒間、あるいは10秒間の間行う。回数は数えるのだけれど、それは一定の時間の間にどれ位の回数をできるかどうかみるためだ。それこそが瞬発力であり、ある一定のスペースの中で、一定期間の間でどれだけ早く動けるかだからだ。」

「こういうワークアウトを取り入れたのは私達が最初だと思う。マイケルも以前は『何回?』と聞いてきて、『30秒』『30回?』『30秒だ。10回ではなく、30秒』というやりとりがあった。」

JUMP ATTACKより引用

※ 引用中のマイケルとは伝説のNBAプレーヤー、マイケル・ジョーダンのこと

MJ

また、トレーニングログのところでも

1.スクワット
(1回につき最大重量の50〜60%で)
30秒

5.パワー・クリーン
(1回につき最大重量の50〜60%で)
15秒

と書かれている。

今までインターネットサイトでこのようなトレーニングプログラムを組んでいるサイトは見たことがない。

しかし、実際にこのトレーニングによって、マイケル・ジョーダンのジャンプ力は、96cmから122cmに伸びたと書かれている。

もともと96cmも跳べていたのに、そこから+26cm伸びたのは驚異的と言わざるを得ない。

仮にこのトレーニングがとても有効だとしたらなぜ広まっていないのだろうか。

どのようなサイトをみてもスクワットをMAX重量の30%程度で8回程度するとパワーの向上に効果的など書かれている。

力-速度曲線

force-velosity
TRAINING SCIENCEより引用

ささべこうき氏のTRAINING SCIENCEでこのような記事がある。

詳しくは参照して欲しいが、力-速度曲線に関してと、それぞれのパワー発揮における有効と思われるトレーニングについてだ。

力-速度曲線を簡単に説明すると、筋肉は発揮する力が大きいほど収縮速度が遅くなり、発揮する力が小さいほど収縮速度が速くなるということです。

スクワットを例に考えるとわかりすいですが、20kgのバーベルはほとんど背負ってないのと同じぐらいの速度でスクワットできるかとおもいます。

なんならそのままバーベルもったままジャンプもできます。

しかし、1RM付近、自分の場合は170kg程度ですが、その重さでのスクワットはとてもゆっくりでジャンプなんてとてもできません。

つまり、力と速度というのは完全に独立したものではなくて、お互いに依存し合った関係と考えられます。

パワーとは

パワーというのは力✕速度で定義されます。

ジャンプ力にパワーが必要なのは言うまでもないですが、力だけ伸ばしても速度が遅くなれば、逆にパワーは下がってしまいジャンプ力が落ちる可能性があります。

実際にはスクワットのMAXがあがれば間違いなくスクワットのスピードもあがると思いますが、速度の方も意識してトレーニングする必要があります。

また、パワーは、力✕速度なので、図の長方形の面積を表します。

force-velosity-p
TRAINING SCIENCEより

つまりこの面積が大きければ大きいほどパワーが向上することになります。

トレーニングを一切しなければこの曲線は一定で、一番パワーが発揮できるのはスクワットでいえば30%1RMの時のようです。

ここをピークパワーと呼びます。

適切なトレーニングするとどうなるのかというと、この曲線が右上の方向に移動します。

曲線が右上に移動すると、図で言えば面積が増えるためパワーが大きくなります。

mensekikakudai
TRAINING SCIENCEより改変

では、このグラフを右方シフトするためにはどうすればいいのでしょうか。

グラフより、を伸ばせば右方シフトしそうです。

具体的にはスクワットの1RMを伸ばす、5RMを伸ばす、クリーン・スナッチの挙上重量を伸ばせばグラフは右方シフトするかと思います。

次に、この曲線を上方シフトするためにはどうすればいいでしょうか。

グラフより、速度を伸ばせば上方シフトしそうです。

速度というのは50%1RMでのスクワットやパワークリーンの速度ということになります。

これは、スクワットやクリーン1回やるのにいったい何秒ないし何ミリ秒でできるかということです。

ここで疑問がでてきます。

「いや、スクワット1回の速度なんか正確に測れないよ。仮に正確にできたとしてもパワークリーンなんて絶対無理でしょ。」

バーベルにセンサーでもつけないと実際にどれ位の速度でバーベルが動いたかなんて1人でトレーニングしていたらわからないです。

いちおうVBT という機械もでてきているのですが、本格的なアスリートでもない限りこれを購入してトレーニングに導入するのは無理かと思います。

vbt
S&Cスポーツ科学計測テクノロジー スポーツパフォーマンス分析
より

話は再びジャンプアタックへ

ここでジャンプアタックに話を戻します。

ティム・グローバー氏は『ジャンプアタック』の中で口をすっぱくしてこう言っていました。

「30回ではなく30秒だ!30秒で正確なフォーム(パーフェクトフォーム)でできるかぎり速くだ!」

これって、つまり速度のことだと思いませんか。

例えば、50kgでスクワットするとして、30秒間に15回しかできなかったことが、1ヶ月のトレーニングで30回できるようになったとしたらどうでしょうか。

1回のスクワットのスピードが明らかに速くなったと考えることができます。

物理のお話

パワーの計算をするとこうなります。 (数式が苦手な人はすぐに上の閉じるボタンを押してください笑)

バーベルの重さをM、重力加速度をg、バーベルの挙上距離をH、ある一定時間にできたスクワットの回数をN、ある一定時間をTとすると

P = MgHN/T

となります。

ここで、重力加速度とバーベルの挙上距離は変更不可能なので変数はMとNとTです。

しかしジャンプアタックにおいてTは一定時間であり、30秒で設定されているので、これも定数と考えると変数はMとNです。

つまり、gとHとTは定数なのでgH/Tは定数であり、αとおけます。

よって、

P(パワー) = α(定数) × M(バーベルの重さ)× N(30秒間にどれだけスクワットできたかの回数)

となります。

M(バーベルの重さ)を大きくし、N(30秒間にどれだけスクワットできたかの回数)を大きくすればP(パワー)は上昇しますが、MとNはお互いに依存しています。

バーベルの重さを重くすればするほど30秒間にできるスクワットの回数は減るだろうし、逆に軽くすれば回数は増やせます。

つまり、M(バーベルの重さ)とN(30秒間にどれだけスクワットできたかの回数)は独立しておらず、依存しています。

実際のトレーニング~当ブログにおける考え~

以下の内容はジャンプアタックに書いてなく、あくまで自分の考えです。

実際のトレーニングはどうすればよいのかというと、

30秒間でできる自重スクワットの回数をまず計測する。

自重以下にはどう頑張っても人間なれないので、これが最大速度となります。

最大速度というのは、30秒間でスクワットができる最大の回数のことです。

そしてバーベルに徐々におもりをつけていき、30秒スクワットでこの最大速度を下回ったところでトレーニングすればよいのではと考えました。

そして、自重でできた最大の回数ができたらバーベルの多さを少しづつ増加させていけばよいでしょう。

具体的な重量は2.5kgが適切だと勝手に思います。

ジャンプアタックにはあまり書いてありませんでしたが、トレーニングはかならず負荷を増やさなければなりません。

漸進性過負荷の原則を適用しないと、いつまでたっても成長しません。

負荷の上げ方はバーの重量を上げたり、回数を増やしたりと色々ありますが、ジャンプアタック的な考えでは30秒間にできるだけ速くなので、負荷を挙げられるところは実際重量のみです。

2.5kg増やしてみて、最大速度を出せるようになったら、また2.5kg増やせばいいのです。

スクワットの速度を測定する。

1回のスクワットのスピードをできるだけ速くと思ってトレーニングしたとしても、なかなかそれを測定することは難しいです。

VBTという最新の機械を使用すれば、可能です。)

しかし、30秒間のうちに何回スクワットできるかと考えてトレーニングすることで平均速度をだすのは容易です。

具体的には、30秒間で、20回スクワットできたとしましょう。

そうすると1回あたりのスクワットの速度は、30秒 ÷ 20回 = 1.5秒/回 となります。

(30秒間のスクワットというのはかなり辛く、精神的・心肺機能的な能力も要求されるため、純粋なスクワット1回の速度を求めるにはやはりVBTが必要でしょう。グローバー氏もメンタルのトレーニングになるとかわけのわからんことを言ってました。)

話は戻りますが、力-速度曲線を上方シフトさせたければ、何秒間に何回といったジャンプアタック式のトレーニングが有効かと思われます。

まとめ

・パワーをあげればジャンプ力があがる(大前提)

・パワーとは力×速度のこと

・スクワットで例えると、「スクワットの重量×立ち上がる加速度」 × 「スクワットの立ち上がる速度」 = 「パワー」

・力-速度曲線:筋肉において力と速度は独立したものではなく、力が増加すれば速度は減少し、速度が増加すれば力は減少する

・スクワットの速度を実際に測定することは難しく、30秒間の平均の速度で考えるとよい

・パワーを上げるためにはスクワットの最大重量を上げることも大切だが、スクワットの挙上速度をあげることも同じぐらい大切。

感想

パワーが上がればジャンプ力が上がると考えこの話をすすめましたが、パワーがあがってもジャンプ力は上がらないかもしれません。

ジャンプ力を上げることについて厳密に考えると本当に難しくて、地面反力だのRDF(力の立ち上がり率)だの力積だのトルクだの専門用語が飛び交うことになります。

どんなトレーニングもそうですが、これだけやればよいといったものはなく、あれもこれもとやる必要があります。

垂直跳びに関して

垂直跳びの高さ = 「ジャンプの上手さ」 ✕ 「SQUAT MAX」 ✕ 「Power Clean MAX」 ✕ 「Dead Lift MAX」 ✕ λ(なにかかしらの係数)

というような単純な式で表すことができれば本当にわかりやすいと思いますが、現実、人間の体というものはそんなに単純ではないのでロボットのような公式を作ることができません。

力-速度曲線からみてパワー発揮の能力をあげるには、全てのトレーニングが有効であり、自分に足りない能力をみつけてグラフを右上にシフトさせればジャンプ力が上がるとおもいます。

最後に一言

パワーのゲシュタルト崩壊