クリーン・ジャーク・スナッチの意味と語源に迫る

みなさんはウエイトリフティング競技(オリンピックリフティング競技)におけるクリーンという言葉を耳にした時、違和感がありませんでしたか?
スナッチとジャークは普段あまり使わない英語なので、競技における動作と名前を一致させることで違和感はありませんでしたが、クリーンの動きが何故クリーンというのか気になりました。
クリーンってclean?きれい?掃除する?どうゆうこと?
と自分の頭の中はぐるぐるぐるぐるクリーンと言う言葉が駆け巡る状態になりました。
絶対的な正解はなく、あくまでインターネットの文献で調べた結果という前提で以下の話を見ていただきたいです。一応ソースも紹介しておきます。
先に答えを言っておくと、クリーンの動作の名前の由来は、コンティネンタルリフトと比較してクリーン(きれいに)にバーを肩の上に乗せる動きだからという結論に至りました。
じゃぁ、コンティネンタルリフトってなんでしょうか。
スナッチ(snatch)とジャーク(jerk)の語源とは?
コンティネンタルリフトを説明する前に、ぱっと説明できるスナッチとジャークを先に片付けたいと思います。

スナッチ(snatch)を英英時点で調べると、
「to take something away from someone with a quick, often violent, movement」
と書かれています。
つまり、「誰かが持っているものをさっと取り上げてしまうような動き」となります。
語源を調べてみましたが2つありました。
フランス語の「arrache:~をすばやく引き抜く」が由来という説と、オランダ語の「snacken:~をさっと取る」が由来という説がありました。
フランス語にもオランダ語にも精通していないのでなんとも言えませんが、いずれにしても「すばやくものを動かす」的なニュアンスはすべての言語で共通しています。
つまり、ウエイトリフティングにおけるスナッチの動作とは「一気にバーを頭の上に、素早く持ち上げる」といった意味になるのではないでしょうか。
たしかに、クリーン&ジャークよりもすばやく頭の上に持ち上げていると思います。

次にジャーク(jerk)ですが、これはもう英語の意味そのまんまと思われます。
英語におけるジャークは「ぐいっと押す、ぐいっと突く」と言った意味です。
ウエイトリフティング動作におけるジャークもまさにぐいっと天井に向かってバーを押して、突いているので英語の意味のとおりだと思います。
よくウエイトリフティングの大会で観客席からクリーンの動作終後に「つけぇええええ!!!!」と怒号が飛んでいるのをYOUTUBEの動画などで拝見しますが、まさしく「JERKすれぇええええ!!!」と叫んでいるのと同義になります。
コンティネンタルリフト(Continental Lift)とは?
では、本題のコンティネンタルリフトとはなんでしょうか。
直訳すると、『ヨーロッパ大陸風の持ち上げ方』となります。
誰目線でヨーロッパ大陸風と言っているのかわかりませんが、ドイツ人ウエイトリフターのバーの上げ方をコンティネンタルリフトと1900年台初頭に呼んでいました。
コンティネンタルリフトのやり方ですが、
1. 地面からバーを引き上げ、 一旦ベルト(または大腿やお腹)の上でバーを止める
2. そこから肘を返してバーを肩の上に乗せる。
このように2段階の動作に分けて肩の上にバーを乗せる動きをコンティネンタルリフトと呼ぶそうです。
言葉だけだとわかりにくいので、動画を御覧ください
ウエイトリフティング競技における「クリーン」と比較して、遅く、非効率的で、ぎこちない印象を受けます。
つまり、現在行われている「クリーンリフト」と呼ばれている上げ方と比べ、とっても汚い(ダーティー)な上げ方と言えます。
インターネットのサイトではここまでは書いてありませんのであくまで予想ですが、コンティネンタルリフトのことをおそらく、「ダーティーリフト(dirty lift)」と呼んでいたのだと思われます。
つまり、「コンティネンタルリフト」に比べて、現在の「クリーンリフト」と呼ばれている方法は、きれい(クリーン)にバーを肩の上に乗せることができるということです。
どうでしょうか。
コンティネンタルリフトにくらべてこちらのほうかとってもクリーン(きれい)だと思いませんか?
Cleanという言葉は形容詞であり、形容詞は常に何かと比較する性質があります。
例えば大きいという形容詞は、何と比べて大きいのか?
速いという形容詞は、何と比べて速いのか?
コンティネンタルリフトより、クリーンリフトはより「クリーン」だったというわけです。
以上のことから、現在のクリーンというバーの上げ方はクリーンと呼ばれるようになったようです。
そして、コンティネンタルリフトはその役目を終え、時代から消え去ったかと思いきや、現代でもコンティネンタルリフトによるバーの上げ方が採用されている競技があります。
それは、「World’s Strongest Man:WSM」におけるアクセルクリーンという動作のことです。
世界最強の男を決める大会では、クリーンリフトではなく、コンティネンタルリフトを採用しています。
アクセルクリーン(Axle Lift)とは?

ストロンゲストマンのコンテストはその大会によって種目が異なるのですが、ウエイトリフティング競技と似たような種目があります。
それがクリーン&プレスです。
ストロンゲストマン的なルールではおそらくどんな方法を使用してでもとにかく頭の上に肘を伸ばした状態でバーを持っていけば試技成功となるようですが、ウエイトリフティングとの大きな違いはそのバーの形状にあります。
ウエイトリフティング競技で行われているのはオリンピックバーと呼ばれているバーです。

ストロンゲストマンでは、このオリンピックバーではなく、アクセルバーというものを使用します。

アクセルバーはオリンピックバーと比較して持つところがかなり太いです。
このため、ウエイトリフティング競技におけるクリーンは、通常フックグリップを使用して一気に肩の上にバーを乗せますが、アクセルバーの場合はそうは行きません。
通常、アクセルバーを肩の上に持っていくには、フックグリップではなく、オルタネイトグリップを用いていったんお腹の上までもっていきます。そこでオルタネイトグリップからダブルオーバーハンドグリップに切り替えて、肩の上に乗せるのです。
この動きはまさしくコンティネンタルリフトのやり方そのものです。
そして、ストロンゲストマンではこの方法でアクセルバーを肩に乗せるので、一連の動きを「コンティネンタル アクセル クリーン」、通称アクセルクリーンまたはコンティネンタルクリーンと呼んでいるのです。
しかし、コンティネンタル クリーンとは矛盾した言葉だと思います。
なぜならコンティネンタルリフトというものはそもそもダーティーな上げ方だからです。
歴史的な流れや色々あるのでしょうが、語源を調べた自分にとってはなんとも歯がゆいです。
まとめ
スナッチの語源:英語ですばやく取るという意味で、クリーン&ジャークに比べてすばやくバーを頭の上に持ち上げることから来ていると考えられる。
クリーンの語源:コンティネンタルリフトと比べてクリーンにリフトできるやり方であるため、ウエイトリフティング競技におけるクリーンはクリーンと呼ばれていると考えられる。
ジャークの語源:英語でぐいっと押す、突くという意味で、ジャーク動作そのものの意味と一致する。
コンティネンタルリフトとは:その昔、ヨーロッパ大陸ではやったリフトのやり方で一旦お腹らへんでバーを止めて、2段階動作で肩の上にあげるリフト方法。現在のウエイトリフティング競技におけるクリーンとくらべてダーティーなリフト方法と考えられる。
アクセルクリーンとは:アクセルバーを肩の上に乗せること。道具を使用しなければいかなる手段を用いても構わないが、基本的にはコンティネンタルリフトのやり方で肩にバーを乗せる方法。
感想
自分は語源厨です。
新しい言葉や普段何気なく使っている言葉がなぜそういう呼び名になったのかということが気になってしまいます。
語源を調べるというのは、結局の所その言葉の歴史背景を調べることになりますのでとても勉強になるしおもしろいです。
最近はググれば基本的に答えが教えてもらえますが、今回ばかしは日本語サイトにもどこにも語源に関しては書いてありませんでしたので敢えて記事にしました。
クリーンについて気になった人の役に立てたら光栄です。
最後になりますが、自分の英語は堪能ではありませんが、クリーンの説明は上記のような説明で問題ないかと思われます。
もし「いや、全然ちがうぞ!」というお考えの方はぜひご意見をいただけたらと思います。
一応今回参照したウエブサイトも紹介しておきます。
参考にしてください。
また、twitterにて参考URLなどを教えてくださいました、井上光樹さんにもこの場をもってお礼申し上げます。
参照サイト
「スナッチ」
MANITOBA WEIGHTLIFTING ASSOCIATION
「ジャーク」
「クリーン」
Why is the Olympic lift “clean" called a clean?
Wikipedia-Olympic WeightLifting-
「その他ウエイトリフティングの歴史など」
USAWA OFFICIAL RULEBOOK 8TH EDITION
THE HISTORY OF OLYMPIC WEIGHTLIFTING